『けいおん!』の見どころのひとつは、高校生活の中で3度行われる学園祭のライブシーンであろう(新歓ライブ等もあるが)。

本来ならば 学園祭といえば 軽音楽部が日頃の鍛錬を披露できる数少ない絶好の輝ける機会であるわけなのだが、この放課後ティータイム(『けいおん!』)の最大のウリは

とにかく演奏しない(演奏シーンがない)軽音楽部

というところである(笑)。

まぁ、普段 お茶ばかりしている連中が学祭に向けて奮闘する姿がギャップとなって更なる感動を呼ぶという側面があるといえばあるのだが(笑)、今回は その計3回の学園祭ライブについて語っておこうと思う。


まず1年目の学祭ライブは『けいおん!』(第1期)の第6話である。

原作の「演奏をしない(見せない)軽音楽部」というコンセプトに基づいてか、1年目の学祭ライブは 演奏が始まると突然PV風の映像(映画『テルマ&ルイーズ』『ブルース・ブラザーズ』を彷彿とさせる)に切れ替わる。

これは照れ隠しであるとか、作画上の省略(テレビアニメで演奏シーンを忠実に描くのは難しい)とか、理由は色々考えられるかと思うが 『けいおん!』という作品(原作)の性質上、アニメとして特に異質なものにはなっていない印象だ。

バンドとしての成長物語、そしてストライプ柄のオチを見ても、この時点では まだまだ普通の音楽アニメといった感じであるw


これが新メンバー・あずにゃんも加わった2年目の学祭ライブ(第1期・最終回)になると、少し様子が変わってくる。

1年目のライブでは喉をやられ、2年目では風邪をひいて発熱というドジキャラというよりは 本番に弱い主人公・平沢唯であるが(苦笑)、なんとか復帰できたと思ったら 今度は家にギターを置き忘れるという サザエさんばりのポカを犯してしまい(笑)、最終回に向けて更なるストーリー的な盛り上がりを見せてくれる。

家からギターを持ち出し、本番中の学祭ライブに向けて疾走する唯の姿は、第1話の冒頭のシーンに繋がっていき、唯のMCでの「今いる講堂が私たちの武道館です!!」そしてアンコール演奏の「もう1回っ!!」「けいおん大好きーっ!!」という名台詞で その盛り上がりは頂点に達するという作りである。

これはまさに第1話から熱心に見続けてくれたファンへのスタッフ・キャストからの贈り物であり、ちょっと感涙無しには見られないw


そして いよいよ3年組にとっては学園生活最後となる3年目の学祭ライブが『けいおん!!』(第2期)の第20話で描かれる。

本作は はっきり言ってしまうと このまま最終回にしてしまってもいいぐらいの神回なのだが、どこら辺が「神」なのかというと 今までと明らかに違うのは

リアルに描かれた「ライブのライブ」

なのであるw

まず過去2回のようにラストの盛り上がりで持ってこられたクライマックス演出としてのライブではなく

始まってすぐにライブ(そして本編のほとんどがライブシーン)

であり、アンプやマイクのノイズ、リバーブの掛かり具合、飛び散る汗、そしてグダグダなMC(そしてコール&レスポンスもグダグダ!!/笑)までをも完全に再現した

時間軸に沿ったリアルなライブ中継

になっているのだ!!w

今まで変化球(演出・ストーリー)によって見せていたライブを、最後の最後は 驚きのド直球で魅せたのである。

そして、さわちゃん先生謹製のHTTのTシャツをバンドメンバーだけでなく、会場のみんなも着て 更にライブを盛り上げていく。

ここまで丁寧にクラスメイトのモブキャラのひとりひとりまでをも ちゃんと設定をつけて描いてきた地味な苦労がここで開花する事となるわけだが(笑)、ずっと見続けたファンも皆

心の中でTシャツを着て こぶしを上げた歴史的瞬間

でもあったのだ(ちなみに このTシャツは後に本当に商品化されてしまった/笑)。


そして最高潮に盛り上がったライブを終えた 放課後ティータイムのメンバー5人は、部室である音楽室で燃え尽きて呆然としていた。

そこでいつものガールズトークで盛り上がっていくのだが、来年の5人での学祭ライブはないという事実に気づき(いや、気づいてはいたのだが口にできなかっただけと思われるが)、堰を切ったように一斉に泣きじゃくる(実は この時2年生のあずにゃんだけ泣いていないのが、今思えば最終回への伏線になっている)。

これはもうアニメの演出うんぬんというよりも

女子高生の学祭ドキュメンタリー

だw

まさに ファンも一緒に号泣の大傑作回なのであるw


実は第1期が終了した後に なんと横浜アリーナを超満員にした『けいおん!』のライブイベントがあったのだが(これもソフト化されている)、これまた涙なしでは見られない感動巨編になっている。

これは私の想像だが、おそらく このライブを山田尚子監督も見ていて

「あ、『けいおん!!』(第2期)の着地点はコレなんだな」

と、思ったに違いない(このライブの時点で第2期製作が決まっており、この場で初めて公に発表された)。


で、話を元に戻すが、この現実に気がついたのは何も5人の少女たちだけではない。

見ているこちら側も

「あ、これで彼女たちの3年間(俺たちのアニメ)が終わっちゃうんだ…」

と気づかされて涙する。


本作の最大のポイントは、『けいおん!』とは サザエさんやクレヨンしんちゃんのように成長しないエンドレスな物語なのではなく

短い少女時代の儚さを描いた作品

で、あるという点だ。

ファンなら誰しもが「この時間が永遠に続いてほしい」と願うのだろうが、『けいおん!』でスタッフたちが描きたかったのは、少女たちの3年間の成長譚なのである。


で、ここまで書いて思い出したのが、アニメ史に残る もうひとつの学園祭を舞台とした作品の事である。

それは押井守監督の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』だ。

しかし面白いのは、こちらで描かれているのは「永遠に続く学園祭前夜」…つまり3年の学園生活できちっと終わってしまう『けいおん!』とは真逆の設定であるというところである。

ただ誤解のないように言っておくが、別に押井監督はアニメ世界のユートピアを描きたかったわけではなく

「アニメブームと騒いでいたって、いつかは終わってしまうものなんだから、みんな いい加減に目を覚ませよ」

という全く逆の意味合いで皮肉っぽく永遠の理想郷(アニメファンからしたら)を描いたものと思われる(ちなみにこれと同じ年に公開されたアニメ映画があの宮崎駿の『風の谷のナウシカ』だ)。


つまり『けいおん!』は「卒業して終わりのある物語」だったからこそ、ここまで盛り上がったとも言えるかもしれない。

だが映画化も決まり、来年2月のライブイベントも決定したので、ファンとしては できれば あともうちょっとだけ卒業を引き延ばして 夢を見させてほしい(笑)。