三谷幸喜監督 第5作目の劇場用作品。2011年公開。

前作『ザ・マジックアワー』以上にファンタジー色が強くなり、それまでのようなワンシチュエーションの作風に こだわらず、より映画的に面白く見せようという努力や自覚が見られて 非常に好印象だった。

それまでの三谷作品は「脚本家としての傲慢」のようなものが色濃く出ていたように思う。脚本至上主義というか「俺が面白い脚本さえ書けば映画はいくらでも面白くなるんだ」というような驕りというか。

しかし本作は脚本の面白さだけに頼った作りにはなっていない。映画のマジックというのは、字面(脚本)だけでは出なかったりするものなのだ。作中では三谷が好きなフランク・キャプラ監督の作品からの引用もあったが、おそらく三谷監督も前作と本作の間に様々な映画を観て研究したのであろう(←どんだけ上から目線!?w)。

本作の見どころは 法廷劇の部分よりも むしろ金縛りや落ち武者の霊などの超常現象と、何故それが見えてしまうのか(見えない人もいるのか)という科学的立証なのだが、幽霊という「見えないものを見せる」事に関しては、演劇的な手法よりも やはり映画というメディアの方が向いている。

それと コメディとしては これぐらい阿呆っぽいとんでもない設定(幽霊が法廷で証言するというような)の方が純粋に楽しめて面白いw 映画にもなったテレビドラマ『トリック』を彷彿とさせるものがあった(あちらは『ステキな金縛り』とは真逆に、超常現象を偽物と仮定し そのトリックを種明かししてしまうわけだがw)。で、なんか雰囲気が似てるなーと思っていたら、案の定 阿部寛生瀬勝久が出ていてワロタw これってまんまやんっ!!(苦笑)

こういう科学的(っぽく)に定義づけて霊の存在を証明してしまうくだりなんかを見ていると 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』等のSF作品を思い出す。だって あの映画を観て「タイムマシンなんて現実にないものが出てきておかしい!!」なんて目くじら立てて言う人はいないからねw そういうエンターテイメントとしてのハリウッド・ライクなスタイルをようやく自作に無理なく取り込む事ができるようになったのかな、と。


そして本作で特筆すべきは主演の深津絵里西田敏行、そして枠を固める中井貴一らの名演だ(特に中井貴一はよかった。完全にお父さんを超えたねw)。

まさに回を重ねていく事で生まれる、こうした役者との出会いやパートナーシップというのが 映画としての質を数段高めていく要因のひとつでもあるという 好例と言えよう。

前作の『ザ・マジックアワー』でも深津は起用されているが、今回こうして主役に抜擢されたというのも 三谷監督は深津絵里のコメディエンヌとしての才能に惚れ込んだのではないかな、と推測。それで入れ込んじゃって小林聡美と離婚したのかなーと思いきや、再婚相手は 別の一般女性だったw

しかし深津絵里は『1999年の夏休み』の頃から ずーっと見続けていましたからねぇ。立派な女優さんになられた姿を見られて なんか感慨深かったですよw

あ、それと三谷作品ではわりとおなじみの演出だが、本作では前作の『THE 有頂天ホテル』と『ザ・マジックアワー』の出演者が その役柄のまま、後日譚のようにカメオ出演している。そんなところも見どころで、これは前作を観てくれた人たちへのファンサービスであり、実に映画的な手法でもあるのだ。


で、 もうひとつの見どころは 美術監督・種田陽平による、裁判所の巨大なセットの作り込みである。クレジットを見ると本作では「タイトルバックデザイン」「グラフィックスーパーバイザー」という肩書きもあった。

おそらく60年代ハリウッド映画のソール・バスモーリス・ビンダーのようなアニメーションによるオシャレなタイトルバックへのオマージュなのであろう。本来なら三谷が敬愛するデザイナーでありイラストレーターの和田誠にやってもらうのが筋だったのだろうが、まぁ和田誠は同業者(映画監督)でもあるから頼みづらかったのかな?w


ラストシーンはネタバレになってしまうので ここでは言えないが、この映画を最後まで見終えると 観ていたこちら側(観客)は ふと気づくのだ。

あ、俺たちも「見えていたんだ」

とw


今回 三谷作品を3作続けてレビューしましたが、その中でも この『ステキな金縛り』は素直に面白い、みなさんに自信を持ってオススメできる1本でした。これは観て損はないですよ。

で、星の数を5つにしようかどうか悩んだのですが、映画の出来としては まだまだ稚拙なところも多いし、今後まだまだ伸びしろがあると判断して あえて4つにさせてもらいました(←またも三谷に対する上から目線w)。

実はこうして短期間で立て続けに三谷幸喜監督作品を観たのには理由がありまして、今度上野の森美術館でやっている『種田陽平による三谷幸喜映画の世界観』という展示を友人と一緒に観に行く予定なのです。つまり全てはそのための予習だったというわけでしてw

あー、こうなってくると 最新作『清須会議』も気になるよなぁ~w


★★★★☆