スティーヴン・スピルバーグ監督作品『未知との遭遇』を数年ぶりに観賞。

前回『ジョーズ』の回で「『ジョーズ』は『ゼロ・グラビティ』に限りなく近い」という話をしたが、この『未知との遭遇』は今までにない 映画館での未曾有の経験という意味で『ゼロ・グラビティ』と非常に共通している。3Dではないが、まさに劇場体感型ムービーの元祖とは言えないだろうか。それまで誰もが実際にも映画の上でも「宇宙人と出会う」という体験をした事がなかったのだから。

で、本作は 『激突!』や『ジョーズ』同様に「見せない演出」でクライマックスまでテンションを落とさない事に徹して作られている。

そして 家具などが突然動き出すポルターガイスト的演出や、神隠し的要素、スピルバーグ同様 コドモオトナな主人公(リチャード・ドレイファス)の精神崩壊など、今まで通りホラー映画的な手法も多分に盛り込んでおり、スピルバーグ演出の本筋は外していない。

それとズームレンズを使わずにトラックアップ(カメラ自体がドリーで移動して寄っていく)して 時にはグンと、時には気づかないぐらいのゆっくりとしたスピードで人物(の内面に)まで擦り寄っていく、スピルバーグの映画文法ではよく使われるカメラワークも健在で、おそらくこの頃に確立されたものだと思われる。

あとこれもスピルバーグ作品の特徴でもあるが「逆光は有効」理論を多用する事で謎めいた地球外生物との「第三種接近遭遇(『未知との遭遇』の原題『Close Encounters of the Third Kind』の日本語訳)」を巧みに見せている。まさに『ジョーズ』等と同様「よく見えない方が(想像力をかき立てられて)効果的」という好例だ。

そんなドキュメンタリー的な超絶撮影を手掛けたのが『続・激突! カージャック』でもタッグを組んだヴィルモス・ジグモンドであり、共同撮影監督としてラズロ・コヴァックスも名を連ねている。この両者はまさにアメリカン・ニューシネマを牽引した、20世紀を代表する名キャメラマンである(ちなみにSFXパートの制作・撮影は名匠 ダグラス・トランブルである)。

あと最後に記しておきたいのが、本作の編集をしたマイケル・カーンについて。彼はこの『未知との遭遇』で初めてスピルバーグと組んだのだが、それ以降ほとんどのスピルバーグ監督作品で編集を手掛けている まさに「スピルバーグの右腕」だ。彼はもう80近いのだが、デジタル撮影を拒み いまだにフィルムで撮り続けているスピルバーグの編集をムヴィオラ等を用いて今も手作業で編集をしている。ノンリニア編集さえしていないらしいというから、まさにオール・アナログである。 


で、今観ても不思議なのは「どうやったら こんな宇宙人との遭遇の過程を描く事ができたのか?」という事なのだが、それはもう「いや、実はスピルバーグは本当に宇宙人と会っていまして…」という事でしか説明がつかないというのが、今では笑い話レベルであるw

しかし それ以上に謎なのは、あれだけSF映画に対して批判的な態度をとっていたフランソワ・トリュフォー監督が、何故に この『未知との遭遇』に役者として出演したのか…むしろこちらの方が、本作最大の謎かw


★★★★★