今までアクション大作や 子供のためのファンタジー作品ばかりを作ってきたヒットメーカーであるスティーヴン・スピルバーグが初めて挑んだ新境地…それが大河ドラマ的なシリアス路線であり、その始まりが この『カラーパープル』であると言えよう。

まぁ、山田洋次における『男はつらいよ』と『学校』シリーズの棲み分けのようなものである(苦笑)。別に宮崎駿の『風立ちぬ』でもいいけどw

『E.T.』でオスカー(作品賞)を逃したスピルバーグの アカデミー賞を意識した作品という見方もできるかと思うが、本作は10部門にノミネートして結局無冠で終わっている。監督賞に至っては候補にすら挙がらなかったという事で、ここからスピルバーグの「アカデミー会員に嫌われている伝説」の長い苦闘の道のりが始まるわけだ(苦笑)。’87年にはアービング・サルバーグ賞(アカデミーの特別功労賞のようなもの。オスカー像はもらえない)を受賞するが、監督・作品賞でオスカーを獲るのは『シンドラーのリスト』(’93年)まで待たなくてはならない。

原作はピューリッツァー賞も受賞したアリス・ウォーカー、主要キャストのほとんどが黒人、音楽はいつものジョン・ウィリアムズではなくて、クインシー・ジョーンズ(プロデューサーとしても参画)、上映時間も当時のスピルバーグ作品としては長尺で154分と、異例づくしのある意味珍品だ。

アレン・ダヴィオー(撮影監督)による美しい映像(特に移動撮影は必見)で淡々と話が進んでいくのだが、正直序盤は退屈だ。この「美しいけど退屈」感はスタンリー・キューブリックの『バリー・リンドン』に通ずるところがあるw

しかし154分で見せる女の一代記であるので、ジャンプカット等も多用して非常にテンポ良く見せている(編集のマイケル・カーンの功績も大かと)。そんなところはマーティン・スコセッシの『グッドフェローズ』的でもある。

本作を観ていると「あー、たった100年前までは黒人もこんなに差別されていたのだなー」と思うのだが、何もこれは黒人だけの問題ではない。

人種差別はもちろんの事、近親相姦にDV、同性愛…と スピルバーグは今まで自作で触れる事のなかったタブーの部分を積極的に描いている。これは黒人差別の問題でもあるのだが、女性が社会的権利を勝ち取るまでの物語でもあるのだ。

主人公のセリー(ウーピー・ゴールドバーグ)に妹のネッティ、シンガーのシャグや義娘のソフィア等、様々な境遇を背負った女性が本作では数多く登場する。これは白人(ユダヤ人)男性による、(黒人)女性讃歌映画と言えよう。

まぁ黒人がこれを見てどう思うかは計り知れないが、スピルバーグ演出の巧さがキラリと光る隠れた名作だとは思った。

ラストはプロセスを多く踏んだ割りには ちょっとあっけないかな、と思ったが…w


★★★★☆


※ 本当はここで『世にも不思議なアメージング・ストーリー』(元々はテレビシリーズ)のレビューをやる予定だったのですが、ソフト入手ができなかったためレビューは割愛させてもらいました(学生の頃に一度観た事はあるのですが、全くもって内容を覚えていないためw)。またどこかで観られる機会があった時には、あらためましてこの場でレビューを掲載できればと思っております。何卒ご了承くださいませ。