『カラーパープル』に続いて作られた スピルバーグの、山田洋次における『学校』的ポジション映画…それが『太陽の帝国』であるw

本作はオイラが映画館で初めて観たスピルバーグ監督作品であり、 実に25年ぶりに再見した。それでわかった事は

オイラは『太陽の帝国』の内容を全くもって覚えていなかった

という衝撃の事実だ(苦笑)。そりゃしょうがないよな、だって中学生の時分に観たっきりだものw

しかし25年を経て見直したら、発見がいくつもあって面白かった。


まず本作は 宮崎駿の『風立ちぬ』に そっくりだ。

いや、これはもはや酷似しているといっても過言ではないかもしれないw 宮さんもスピちゃんも お互い戦争は反対だけど、無類の兵器好きという とんでもなく厄介な共通項があるわけだが(笑)、そうした兵器(特に戦闘機)への強い憧憬の念が両作では描かれている。それと上海での群衆シーンも『風立ちぬ』での関東大震災のシーンに似てなくもない。意外と指摘がないけれど、きっと観ているな。宮さんはw


それと前述の群衆シーンなど、迫力のある壮大な引き画が多いのも特徴的だ。

これはおそらくスピルバーグが敬愛するデヴィッド・リーンや黒澤明の影響だろう(そもそも本作は デヴィッド・リーン監督が映画化しようとしていた企画だったらしい)。広大なオープンセット(日本軍の捕虜収容所のセットは まるで黒澤の『羅生門』のようだ)や、何千人ものエキストラを配したモブシーンは まるで往年のハリウッドの大作映画を彷彿とさせる(そして劇中『風と共に去りぬ』へのオマージュもあり)。スピルバーグも賞レースを意識してか、いつしかこうした文芸大作も作るようになったというわけだ。しかし こうして見返してみると、CGのない時代の映画はよかったなぁ…と、つくづく実感w


あと意外な出演陣にも驚かされた。

主演の子役、クリスチャン・ベールは4000人のオーディションの中から選ばれたシンデレラ・ボーイだった。まぁ映画の世界では「子役は大成しない」というのが通例なのだが(例外なのはジョディ・フォスターと美空ひばりぐらいかw)、彼はのちに『ダークナイト』でバットマンになったw カルキン君大五郎のようにはならなかったのである!!(苦笑) それとジョン・マルコビッチが出ていたというのをすっかり忘れていたw まぁこの時からジョン・マルコビッチはハゲビッチだったので(笑)、共演の伊武雅刀の方が50倍ぐらいかっこよかったな~☆w あとちょい役で『ピンクパンサー』シリーズでクルーゾー警部(ピーター・セラーズの方)の召使い・ケイトー役として有名なバート・クウォークの姿を見掛けた!! やっぱりたくさん映画を観てから見直すと、こうした様々な発見がありますね。


で、本作の舞台は日中戦争中の上海。物語のスタートは1941年…41年といえば、真珠湾攻撃後のカリフォルニアを描いたスピルバーグのコメディ映画『1941』と同じ年…つまり これは極東の地で起こった「裏1941」だったのではなかろうか。

かつてスピルバーグは スタンリー・キューブリックから『1941』はコメディとしてではなく、ドラマとして作った方がよかったのではないかと指摘されていたという。そう考えると、まさしく この『太陽の帝国』は 『1941』のリベンジだったのかもしれない。

戦争とは無差別に人が殺されるという悲しさもあるが、同時に生き残ったものの苦悩や悲哀、そして あまりにも捕虜収容所での生活が長く過酷だったために、ついには愛する父と母の顔すら思い出せなくなってしまった少年・ジェイミーのように、戦争とは人をこうも残酷に変えてしまうという恐怖が観る者の胸を締め付ける。

前作『カラーパープル』と同様、冒頭の30分ぐらいはまったりとした展開で退屈なのだが、おなじみアレン・ダヴィオーによる超絶的に美しい撮影と、マイケル・カーンによるツボを得た心地の良い編集とがばっちりと融合しており、観客の目を最後まで釘付けにする。部屋が変わる度に貼り替える(もはや記号と化した)ピンナップや、足下(ゴルフシューズ等)から映す演出、ラストのハレーションをわざと映り混ませた神々しい構図、オープニングの水面に漂う棺桶とラストのアタッシュケースを結ぶ「死と再生」のイメージ、そして『カラーパープル』でもご披露した流麗なカメラワーク(移動撮影)などなど、如何にも映画的な手法を駆使してふんだんに魅せてくれている。

あと気がついたのは、作中でイギリス人のジェイミーと日本軍の少年兵(片岡孝太郎)との ほのかな友情が描かれているが、見ていて「あ、これは『E.T.』なんだな」と思った。つまり欧米人からすれば、アジアの言葉が通じない 肌が黄色い男の子は異星人にしか見えなかったであろう。まさにファースト・コンタクトである。しかし極東の地においてはアウェイな白人の方がむしろ異端であり、敵であり、エトランゼであり、エイリアンなのである。そういった主観の相違というのも本作の大きなテーマだろう(使用人だった中国人女性にジェイミーが逆に殴られるシーンも象徴的だった)。

しかし『カラーパープル』もそうだったけれど、傑作とまでは言わないが これだけの超良作を作っても オスカーを獲れなかったっていうんだから、スピルバーグもよっぽどアカデミー会員から嫌われていたのかなーと思うよ、つくづく…(苦笑)。


★★★★☆