小津安二郎監督、初期のサイレント作品の名作。20年以上ぶりに再見した(初めて観た時はフィルムだった)。

移動撮影の切り返し等、後の小津作品ではあまり使われる事のないスタイルが多々見られるが、こうしたサイレント映画での経験を踏まえて、トーキーやカラーに移ってからは どんどんソフィストケイトされていき、あのフィックス・ローアングルのような作風が確立されていくわけなのである。

主人公の兄弟は、常に帽子(体育の赤白帽みたいなやつ)を被っている。家の中で ごはんを食べている時もだ。よくよく考えたら とても不自然な画なのだが、二色の帽子を被っている事で どちらが兄で弟かが一目でわかるような 映画としての「記号」として機能しているのだ。こうしてサイレント時代には 音や色がないという事を如何に映像表現で補うかというところに全身全霊を注いでいたわけであり、時代が変わりトーキーやカラーになっていく中で小津作品は その映像手法を固定のもの(様式美)として脚本(台詞劇)に特化していくのであった。

本作は、子供の世界と大人の社会のヒエラルキー(の無情)を描いている。路地裏、板塀、砂利道と失われた昭和(戦前)の風景が描かれているが、人間の本質は今も昔も変わらなく 風刺劇として今見ても充分に面白い。そして後の『お早よう』等に その精神は受け継がれている(まるでサイレント映画のように黙して「しゃべらない」シーンがあったりして面白いw)。

こうした時代や言語を超越した作品で、小津は世界中のシネアストを魅了し、今も愛され続けている。


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