ロビン・ウィリアムズが急逝したが、先日 ハリウッドの特殊メイクアップ界の巨匠 ディック・スミスも亡くなった。享年92歳。

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もちろんロビン・ウィリアムズのように有名ではない いわゆる映画の裏方の人なので知らない方も多いかと思うが、ディック・スミスとは 現代の映画等における特殊メイクアップの基礎を築いた超偉人級の人物なのである。

有名なところでは

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『エクソシスト』のリンダ・ブレア(右はメイクではなく、ダミーヘッド)や


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『小さな巨人』のダスティン・ホフマン(121歳の老けメイク)


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『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランド(当時47歳。特殊メイクで60代に)


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『ハンガー』のデヴィッド・ボーイの老けメイク


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『アマデウス』のF・マーリー・エイブラハム(サリエリ)の老けメイク

等々…挙げていったらキリがない程の仕事量である。

そんな彼が得意としていたのは前述にある「老けメイク」だ。1本の映画の中で登場人物が違和感なく老いていく…そんな特殊なメイクをどのように開発したのか…そのヒントは「歯医者さん」。

そう、ディック・スミスが独自に編み出した特殊メイクとは 石膏で役者の顔型を取り、歯科技工で用いられるアルジネイトやシリコン等を使って いわゆる 人工皮膚のようなものを作り(それを「アプライエンス・ピース」と呼ぶ)、皮膚を痛めない特殊な接着剤を使い 一部の隙もなくピッチリと皮膚に貼り付けるというもの(役者へのストレスを軽減させるために)。

これにより リアルな人間の皮膚のしわやたるみを人工的に作って老けさせる…というわけである。

で、もちろん こうした革新的な技術も凄いのだが、それよりも もっと凄い功績というか大偉業を成し遂げた事でディック・スミスは名実共に巨匠となり、そしてリビング・レジェンドになったのだが…その偉業とは

こうした特殊な技術を自分のものだけにはせず、オープンソースとし 後身育成に尽力・寄与した

という事なのである。

これだけの大発明なのだから企業秘密にし 自分だけのものとすればハリウッドで仕事も独占できるし、これで特許でも取れば莫大な富を得る事もできたかもしれない。

だが、ディック・スミスは そうはしなかった。つまり 自分だけの利益よりも業界(特殊メイク界)全体の技術発展や地位向上の方を最優先させたのであった。

なので ディックは全てを包み隠さず、惜しみなく弟子たちに その技術を伝授したのである。

で、その門下生には 後に特殊メイクアップ界を代表するアーティストとなる リック・ベイカーや ロブ・ボッティン、日本人では江川悦子や辻一弘らがいる。

そして ディックの教えを請うた彼らもまた、自分たちで編み出した技術を後身たちに伝え続けている。つまり こうした技術伝承という業界の慣習までをも確立してしまった人なのだ。

なのでディックは全ての映画人から尊敬され愛されていたというわけなのである。


ちなみにオイラが映画好きになったきっかけが こうした特殊メイクだった。

『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロ演ずるトラビスのモヒカン頭が 実はディック・スミスが手掛けたカツラであったと知った時は衝撃的だった。
 
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どう見ても 顔とカツラの境目がわからないし(前述のアプライエンス・ピースで貼り込んでいるため)、ちゃんと側頭部には青々しい剃り跡まで再現されているのだ!!

これでまず何を学んだかというと、映画というものは 別にちゃんと時間軸通りに撮影するものではないという事を この特殊メイクを通じて知ったのである(なのでモヒカンをメイクにする必要があった)。

つまり ディック・スミスは オイラにとっても間接的に「(映画の)お師匠さん」だったわけである。

で、中学の頃は特殊メイクアップ・アーティストになりたいと思い、高校に進学してからは自主映画を撮ったりなんかして、後に映画学校にも通った。

その頃には 特殊メイクよりも 監督業や脚本家に憧れ、青春時代の大半を映画に捧げた。

なので ディック・スミスがいなかったら 今のオイラはなかっただろうし、今まさに こうしてブログで映画のレビューを書く事もなかったであろう。

だから一度お会いしてお礼を言いたかった人物でもあったのだ。

これから機会がありましたら またこの場でディック・スミスの特殊メイクの凄さについて語ろうかと思っています。

合掌。