今まで当ブログでは『となりのトトロ』(カンタ裏主人公説)や『紅の豚』(マルコ・パゴットは如何にしてポルコ・ロッソになったのか論)等、宮崎駿監督作品について熱く自論を展開してまいりました。

で、今回語り尽くすのは『ルパン三世 カリオストロの城』についてです。

以前にも当頁で何度か書き下ろした事があるのですが、今回新たに再編致しました。

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以前 オタク評論家の
唐沢俊一氏が「カリ城否定派」の立場として、カリ城の作品としてのアラについて語っており、そのひとつとして「物語の整合性」について論じていた。

国営カジノの大金庫から盗んだゴート札(偽札)がきっかけとなり、ルパン一味はいざカリオストロ公国へ乗り込むわけですが、唐沢氏は「その動機・必然性がちっとも描かれていない」と その時 指摘していた。

だが、実際にはそんな事はない。ちゃんと描かれている。

ルパンは何故にカリオストロ公国へと忍び込んだのか…それは

カリオストロ伯爵への復讐

に他ならない。

ルパン曰く「青二才だった」頃に臨んだゴート札の謎解き…しかしその時ルパンは惨敗を期した。そして国営カジノの偽札を見た瞬間にその事を思い出し、急遽カリオストロ公国へと向かう…というような演出がなされている。

で、ここからは私の仮説なのですが…

実はルパンは国営カジノにゴート札があるということをあらかじめ知った上で盗みに入ったのではなかろうか

と。

つまり大量の札束を見て「んんっ?」と偽札だと気づき、何かを思い出したかのように見えた あの一連の行動が全て、次元をカリオストロ公国へ連れていくためにルパンが打った芝居・演技だったとしたら…。

もしルパンが国営カジノにゴート札があるのをあらかじめ知っていた上で盗む事によって自らきっかけを作り、その既成事実で次元をそそのかしてカリオストロ公国に行っていたとしたら…これで辻褄は合うし、物語の整合性も出てくるのだ。

よくよく考えてみるとルパンは常に全編に渡って取り巻きの人間を実にうまく利用して行動している。次元は前述の通り、ルパンの演技に乗せられて同行する事に(これはあくまで私の推測ですが)。五ェ
門はあまり事情をよく知らぬままルパンに呼び出されて後日 のこのこと遅れて参上(笑)。そして不二子は独自に城内へ潜入し先に偽札の謎に挑んでいたが、ルパンはそれをも お宝発掘のためというよりはクラリス救出のために利用する。で、仲間だけではなく天敵・銭形警部も自ら通報により呼び出して城内潜入のために利用しているのだ(その後は逆に城外への脱出や、偽札を全世界に知らしめるテレビ中継でも利用する事に)。

ここまで虎視眈々と伯爵への復讐を企ててきたルパンだが、そんなルパンでも本当にすっかり忘れていた事があった。

それがクラリスの存在だ。

これは別に演技ではなく、カーチェイスで助けた少女がしていた指輪を見るまでクラリスの事はすっかり忘れていたものを思われる(後に述懐もしているが)。

何故なら 盗んだ金がゴート札だと気がついた時(演技)と、指輪を見てクラリス(青二才の時分に命を救ってくれた少女)の事をふと思い出した時のルパンの驚いた顔(シリアス顔)は明らかに異質なものだったからだ。これは宮崎駿がその違いを明確にするために意図的にやった演出だと自分は解釈する。

で、ここから話は復讐譚からクラリス救出劇へとシフトしたかのように一見思えるのだが、「クラリスを助け出す(盗む)」という行為も 実はカリオストロ伯爵への復讐の一端だったのではなかろうか(もちろん青二才だった頃に助けてもらった恩返しという意味合いもあるが)。

なので私は世間でよく言われるルパンはクラリスのことを愛していた」という説には反対なのである。

ルパンは 世界中に恥をさらし悔しがる伯爵の姿見たさにクラリスを救い出し奪った…つまり

ルパンはクラリスまでをも利用していた

と考える。実に策士であり、大人だw

しかしクラリスは初恋レベルとはいえ、ルパンに対して恋心を抱いていた(いや、他に頼れる者がいなかっただけかもしれないが)。

その証拠にクラリスは「私も泥棒の仕事を覚えるから連れて行って!」とルパンに抱きつき懇願するわけだが…
その時のルパンのを思い出してみてほしい。

まるで鳩が豆鉄砲をくらったかのようにビクッと驚き、総毛をビリビリと立たせているではないか。

あのリアクションは

「えっ!? オレ別にそんなつもりで助けたわけじゃなかったんだけども…」

という風に見えなくもない。

そもそもルパンの目的
クラリス救出ではなかったし、恩返しという意味合いがあったとはいえ、むしろそれを復讐のために利用していたわけなのだから。

そしてルパンは伯爵に向かって「ロリコン伯爵」とまで言い切っているのである。

それは同時に「俺(ルパン)もオッサンではあるけれど、ロリコンではない」と表明していることに他ならない。何故ならリコンはロリコンに向かって「ロリコン」とは言わないからだw

そう考えるとやはり恩人であっても

ルパンはクラリスを一人の女性としては見ていなかった

というのが妥当だと思われるのだが、如何だろうか。

ルパンの帰るべき港は やはり峰不二子なのだ。

そしてルパンはクラリスを旨くなだめて、しかも「おでこに」チュッなのだ。


これもルパンがクラリスを子供扱いしている証拠である。

まぁクラリスが宮崎駿の理想の女性像である事は間違いないのだろうが(少なくとも不二子よりは)、その想いをあえてルパンに投影しなかった事で映画(物語)として成立させているのだ。

更にまた私見を付け加えさせてもらうと、ルパンは 伯爵への復讐、そしてゴート札の謎解きさえできれば泥棒稼業を引退してもいい…という心持ちで この仕事に臨んだはずである(カリ城でのルパンはもう既にオッサン化していたし/笑)。そう、事実上 カリ城は

ルパン三世の最終回

なのだ。

で、本当の(TVセカンドシリーズ)最終回(第155話)さらば愛しきルパンよ』も宮崎駿が照樹務というペンネーム(アニメの制作会社・テレコム・アニメーションフィルムを文字っている)で演出をしているのだが、宮さんは当初 銭形に変装していた本物のルパンに緑色のジャケットを着させたかったらしい。つまり赤ジャケ(TVシリーズ)のルパンは全て偽物だったという
「青二才」だったルパンへの否定とも取れる 実に大胆な結末であった(そういえば銭形に変装というくだりはカリ城そのものだ)。つまり その最終回の1年程前にカリ城で、最終回では幻となってしまった緑ジャケ(本物)ルパンを登場させているのだ(この時TVシリーズもオンエア中で、そちらは赤ジャだったのにも関わらずあえて)。

そして指輪を手に入れ 謎を解き明かし、手に入れたお宝は「ポケットに入らない」古代ローマの遺跡と「あなたの心」だった。

そう、つまりどんな大金や宝石にも換えられぬ この究極のお宝と言うべき手にする事ができないふたつの宝物」(炎のたからもの』)を手に入れた時点で、ルパンには もう盗むべきものはなくなってしまった…つまりそれは

大泥棒・ルパン三世の終焉・廃業

を意味する、というわけなのである。

宮崎駿は「ルパン三世というモンスターにとどめを刺す」つもりでルパンの、そして自分のキャリア(アニメ)の集大成をカリ城で実現したのだ。ちなみに これと同じような「語(世界観)の構築と破壊」を押井守は『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』や『機動警察パトレイバー2 the movie』等で延々と繰り返し続けている。

しかし それにはひとつの大きな誤算があった。それはひとり歩きし、イメージが肥大化し過ぎたキャラクターにとどめを刺したつもりが いつの間にか「カリ城のルパンこそが本当のルパン」というパブリック・イメージを逆に植え付けてしまったのだった。大衆車・フィアット500に乗り、カップのきつねうどんを食べる、わざとかっこ悪く描かれた「おっさん(宮崎)ルパン」だったのに…これにはモンキー・パンチも宮さんも困惑しただろうw


【後編に続く】


※後編では未公開の新作カリ城論を展開させます。乞うご期待☆