処女作にしてこの完成度の高さ(厳密に言うと2作目なのだが)。和田誠の『麻雀放浪記』と並ぶ傑作。
作中で16ミリフィルムを回し モノクロパートで見せているが(このパートの撮影は浅井慎平によるもの)、これはお葬式(という儀礼)のメイキングであり『お葬式』という映画のメイキングにもなっている。
そしてこの話自体が伊丹の実体験であり、自宅(湯河原の別荘)や実際の妻(宮本信子)を使って撮影された「ミルフィーユ・メタ構造」になっているのもミソだ(ところで愛人の話も実話なのだろうか?w)。

伊丹十三は当時 蓮實重彦に傾倒しており、『お葬式』の試写に蓮實を呼び、満を持して観せたら 一言「ダメですね」と言われたらしい(苦笑)。そして それ以降作風をエンタメに寄せていく。
で、余談なのだが それによく似たエピソードがある。
押井守監督の『うる星やつら オンリー・ユー』を「甘い甘いお菓子のような映画」と評したのが 伊丹十三だった。で、伊丹は当時併映されていた相米慎二監督の『ションベン・ライダー』の方を絶賛しており、それを聞いて落ち込んだ押井は劇場で『ションベン・ライダー』を観て「もっと(相米のように映画は)自由に作っていいんだ」と思い立ち、開き直って次に作ったのが あの名作『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』だったというわけだ。
そして意識してかしないでか、押井守の作風は伊丹十三のそれに寄せられていく。
『機動警察パトレイバー2 the movie』の柘植と南雲しのぶの関係性やピカレスク感は、そのまま『マルサの女』の権藤と板倉亮子に置き換える事は容易だ。

で、最後に言っておきたいのは この『お葬式』、処女作で取り扱っているのが いきなり「死」なのである(それと紙一重な存在として「生(性)」が描かれているのも非常に興味深い)。
まさか葬式の話が映画になって、しかもたくさんの客が呼べるとは当時は誰も思わなかったと思うが、これが日本の映画界に一石を投じ、道を切り開いた。つまり何が言いたいのかというと『お葬式』がなければ、オスカーを獲った『おくりびと』もなかったかもしれないのである。

★★★★☆