前作は ロッキー再生の物語だったわけだが、3作目ともなるとちょっと毛色が変わってくる。

オスカーを受賞した1作目はアメリカン・ニューシネマの終焉を感じさせる文芸的なものであったが『ロッキー3』は良い意味でエンタメ作品として昇華されている。

劇中では老いてなおビルドアップされていき、アメックスのテレビCMをもこなしてしまう「器用なロッキー」が描かれているが、それはそのまま役者としてスターダムにのし上がり洗練されていった役者・スタローンの姿とそのまま重なる。

1作目の生きる事に不器用だったロッキー・バルボアが好きな人からしたら、パート3のロッキーはまるで別人のようだ。しかしロッキーの成長=スタローンの成長と考えて見れば 何の不思議もない。そこにはサンダー・リップス(ハルク・ホーガン)やクラバー(ミスター・T)と同様の「肉体のリアリティ」があるし、それを意図して狙って作られたものだと思われる。 

そこに恩師ミッキーの死や、かつての好敵手であったアポロ・クリードとの熱い友情等の多層化したドラマがより一層盛り上がりに拍車を掛けていく。


かくしてロッキーは、3作目にしてロッキー=スタローンとなっていった。

そして本作に華を添えたのが主題歌であるサバイバーの『アイ・オブ・タイガー』の存在だ。

サクセスを手中にし「野生の眼」を取り戻したロッキーとアポロには もはや敵無しだ。


しかしこれで完結したと思われたロッキー・サーガだが、ここまで膨張した人気と肉体に終わりはなく、また次作へと続いていくのであったw


そこで気がついたのは「スタローンとは 真面目な人なんだな」という事(笑)。

所詮映画だ、嘘であり絵空事だと言ってしまえばそれまでだが、そうではない妙な説得力が本作にあるのは、スタローンはこのロッキーという映画を「金や名声に溺れてはイカン。そんな今こそ野生を取り戻さなければ」と本気で思って作っているからだ。「映画の中のロッキーはストイックだけど、実際スタローン本人はそんな事ないんでしょ?」と言われてしまったら元の木阿弥、ウォーター・バブルであるw この徹底したリアリティが本作の魅力と直結している、というわけだ(こうした肉体の、成長のリアリティが、同様に同じ主人公で長く続いた『男はつらいよ』シリーズの寅さんとは大きく異なる点だ)。

こうなってくると もうスタローンから目が離せなくなってくる。まるで麻薬のような映画だwwww


★★★★