シリーズ8作目『男はつらいよ 寅次郎恋歌』を観る。

もう繰り返し何度も観ている国民的映画ではあるが、子供の頃はただの喜劇映画としてしか見ていなかったので、大人となった今『男はつらいよ』を撮影や脚本や演技等、山田洋次監督の作家性という観点であらためて検証していきたいと思う。

寅次郎恋歌の話の軸のひとつになるのは寅さんの義弟・博の母の死だ。
『男はつらいよ』シリーズは喜劇映画と思っていたのだが、よくよく観てみると寅さんが出てくるシーン以外は意外と暗いw 『家族』や『学校』シリーズ等と基本的には変わらないシリアスホームドラマだ。
通夜の席で激昂する博(前田吟)のシーンには胸を打たれた。よくよく考えたらお正月映画にはふさわしくない内容だw
そこから読み取れるのは、別に山田洋次は喜劇映画を作りたくて撮っているわけではなくて、松竹から求められて作っている中で自己の作家性を打ち出している映画監督であるという事だ。
そこで渥美清の存在が緩衝材となっているというわけだ。そしてそれを受ける賠償千恵子の演技が彩を添える。

それと感じられたのは黒澤明の影響だ、松竹なのに(苦笑)。
テレビ放映も念頭にあったのにも関わらず、こだわり続けたシネマスコープサイズ、望遠レンズの多様、脚本は一人で書かずチームで…と挙げていくと共通点はかなり多い(そういえば博の父役・志村喬は黒澤組の常連だ)。
画像のように家族が茶の間に集まるシーンではシネスコサイズの利点を活かし横長の画角に皆が綺麗に収まるように配置しているのがよく見て取れる(しかし山田洋次は黒澤のようにマルチで撮る事はない)。

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山田洋次については他にも書きたい事は色々あるのだが、シリーズは49作もあるので、また別の機会に譲るとしようw ありがとう、BSテレ東さん!!w