映画『ジョーカー』観了。

これを観て「アーサー(ジョーカー)は俺だ!!」と思えたボンクラも「自分の身の不幸をこうした形で解放するのは如何なものか」と不快に感じたリア充も どちらも不幸で、ある意味幸せ…そんな禅問答のようなというか、リトマス試験紙のような映画が『ジョーカー』だ。

予告を見た時から感じていたが、本作はマーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』そして『キング・オブ・コメディ』へのオマージュに溢れている。というか、狂気に満ちたホアキン・フェニックスの顔つきが既に若き日のロバート・デ・ニーロであり、ハーベイ・カイテルのそれだ。ゴッサム・シティは完全に70年代のニューヨークのスラムそのものだし、細かい事を言えばクラウン(ピエロ)仲間が 『タクシードライバー』のトラビス(デ・ニーロ)の同僚のピーター・ボイルやノーマン・マットロック似であったり、ロバート・デ・ニーロの黒人女性好き(『タクシードライバー』でトラビスがナンパしたモギリ嬢も、実際の奥さんも前妻も黒人女性だ)がアーサーのキャラクターにも反映されていたりと『タクシードライバー』を100回ぐらい観た自分からしたら枚挙に暇がない。
それとスタンリー・キューブリック監督へのオマージュも感じられた。オープニングの80年代の一時期だけに使われたワーナーロゴの復活や『時計じかけのオレンジ』を彷彿とさせる暴力シーン等々。

本作はDCのバットマン・サーガを観ていなくとも楽しめるが、ゴッサム・シティとウェイン一家の事ぐらいを予備知識として入れておけば充分。むしろ『タクシードライバー』を鑑賞してから観に行く事をオススメする。

そして本作にはその元ネタとなったロバート・デ・ニーロ本人まで出演しているのだ。まぁ今の若い子にはわからないんだろうな、この胸熱感は。現に劇場で観ていた人たちの反応を見ていたらポカーンとしている人(特にDCシリーズとして期待してきた若者)が多かったし(苦笑)。

ダウナーな作品なので万人には薦めないが、質感の高い 間違いなく近年稀に見る傑作。
ただ劇伴は最近のハリウッド映画にありがちなもので個人的にはイマイチ。挿入曲のセンスはよかったのに、もったいなかったなw

★★★★☆