かーやん☆ブログ

DJ karyangという名でDJもしております。から揚げ51個おじさん。

十三の顔を持つ男 ~伊丹十三監督作品レビュー

マルタイの女

いよいよ最終作、つまりは遺作となる『マルタイの女』。
 
脚本は伊丹十三となってはいるが、当初共同で脚本を書いていた三谷幸喜のエッセンスはかなり色濃く残っている(クレジット上では「企画協力」となっている)。マルサやミンボーのようなエンタメ性がかなり高くなっており、久々に伊丹映画らしさが発揮された作品ではあるが興行的には惨敗だった。やはり当時人気のあった三谷幸喜を使ってまでもこの作品を成功させたかったという伊丹の表現者として、被害者として、そして映画人としての意欲が感じられる一本になっている。
 
本作で描かれているのは「生きているという事は素晴らしい」という人間賛歌である。
果たしてそんな人が自殺をするのだろうか?

映画で世界を変えられるのか
 
命を掛けてでも「映画を撮る」という事とは

…そんな事を考えさせられました。

果たして伊丹十三がもし今生きていたとしたら、一体どんな映画を撮っていたのでしょうかねぇ。
ちなみにこの特報だが…おもいっきりクライマックスの大ネタをそのままやっちゃってるw 予告編として本当にコレでよかったのだろうかw
ちなみに本編の方で護送車に火炎瓶を投げ込むカルト教団信者の役を演じていたのは、今や時の人の山本太郎だ。
メロリンキューにカルト教団…まさにダブル黒歴史である(苦笑)。 


★★★☆☆ 

あげまん

あげまん…冷静に考えたら とんでもないタイトルだ!!w しかしよくテレビとかでも放映したもんだなぁ。放送禁止用語だよ!!w
 
ここに来て 伊丹十三は日本映画を牽引するだけでなく「(社会)現象」になった。
このままこんな作品や『タンポポ』みたいのを作り続けていれば あんな事(襲撃事件)にはならなかったのだろうが…それができず、毎回サムシング・ニューを求めてしまう野次馬根性旺盛なところがジューゾー・イタミたる所以なのだろうw
本作の撮影は何故だかいつもの前田米造ではなく、山崎義弘。気持ちいつもより明るいトーンで、あげまん女・宮本信子の顔もツヤツヤとしている。
そして本多俊之の悲哀のある むせび泣くサックスもまるで『タクシードライバー』のようで良い。
まぁ、伊丹十三にとっての最高の「あげまん」だったわけだよね、宮本信子は。
当時観た時は子供だったので(大人が)汚くて下品な映画だなーと思っていたのだが、今この歳になって見返したら素直にいい映画だなと思った。伊丹監督が残してくれた人生の応援歌だよね、コレは。

で、本作の特報を見てビックリした!!
よく見るとプレスには三國連太郎の名前が…。
おそらく島田正吾が演じた政界のフィクサー・大倉善武の役をやるはずだったのだろうか。何で降板しちゃったんだろ?


★★★☆☆ 

タンポポ

何度も観て わかっていても同じところで笑ってしまう。
 
『タンポポ』は何が凄いって、この「ラーメン・ウエスタン」的発想をもってすれば 同じようなウェルメイドな作品がいくらでもつくれるというのに、伊丹十三はそれをしなかったという事だ。これ一回限り。だから『タンポポ』は今も輝き続けている。そして観るたびにウットリとする映画だ。そして必ず腹が減るw

たいめいけんのオムライスも 韓国の骨付カルビも 北京ダックの食べ方もこの映画で学んだ。それと複数のエピソードが同所同時間軸で同時進行するという構成は『パルプ・フィクション』なんかよりも全然早い。ラーメンブームも90年代に入ってから。そう考えると全てが早かった。
つまりここから「時代を牽引する」伊丹映画の快進撃が始まったのである。

ちなみに本作では映画監督の藤田敏八が役者として出演している(歯医者に行く男の役だ)。そして『スローなブギにしてくれ』では伊丹が出演。まるで『1941』(スティーヴン・スピルバーグ監督)と『ブルース・ブラザーズ』(ジョン・ランディス監督)のような関係であるw これぞまさに映画が織りなす円環なのだ。


★★★★★ 

静かな生活

伊丹十三監督の作風は明らかにここから変わった。映画的な手法を捨て、画は俯瞰・引き気味で長回し。ストーリーテリングに徹した作風に変化しており、良くも悪くも大江家のホームムービー(記録)のような作りになっている。

伊丹は本作で市井の人々を中心に描いた(とはいえノーベル文学賞作家が父の一家の話だがw)。これはおそらく『お葬式』以来であろう。もしかすると本作は『お葬式』を歯牙にも掛けなかった蓮實重彦に対する 蓮實塾門下生・伊丹十三からの挑戦状だったのかもしれない。
久しぶりの伊丹作品への出演を果たした山崎努とロバート・デ・ニーロ張りの怪演を魅せたヤング渡部篤郎、それと先日亡くなられた今井雅之の演技に注目。

そして男子的には水着姿の緒川たまきと、何故だか伊丹組の常連だった元AV女優の朝岡実嶺に刮目せよ!!w


★★★☆☆ 

ミンボーの女

『〜の女』シリーズの頂点であり、カタルシスのある第一級のエンタメ作品としても巧く昇華されている。クライマックスのスリリングな駆け引きも実に映画的である。
 
しかしこんなの作ったら…そりゃあ刺されるわな(五社英雄も危惧していたらしい)。
いつもの山崎努や津川雅彦等の名優に頼らず、若手の大地康雄と村田雄浩をメインに据え、小気味の良い展開でコメディ作品としても見せている。出番は少ないが大滝秀治の名演もキラリと光る。

そしてここにも朝岡実嶺の陰が…wwww


★★★★☆ 

スウィートホーム

黒沢清 脚本監督作品。伊丹は製作総指揮 兼出演。
 
東宝と伊丹プロと揉めて裁判沙汰にまでなり、現在はDVD化もされていない幻の準伊丹映画。

この映画とトビー・フーパー監督、スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮による映画『ポルターガイスト』は関係性が非常に酷似している。
というよりは意図して伊丹が寄せたと考えるのが妥当であろう。
こうしたお遊びも怪人ジューゾー・イタミの「映画術」の一端なのである。


★★★☆☆ 

大病人

おそらく『ミンボーの女』公開時に襲撃事件で入院した際の経験や伊丹の死生観が盛り込まれた作品(しかしよくよく調べてみたら、本作は襲撃事件以前に企画されていたものだとの事)。
 
宮本信子主演作品が続く中で、本作で宮本は控えめな(伊丹十三夫人的な)演技で助演にまわっており、主演の三國連太郎と津川雅彦の名演技合戦が楽しめる一作。
 
そして伊丹組常連の高瀬春奈のエロさが作品に華を添えている(それにしても伊丹作品にはよく「愛人」が出てくる。だからこそ色々と疑われたわけだがw)。それと木内みどりの婦長役もびったしハマっていた。

かつてマーティン・スコセッシ監督は「私はカメラの横で死ぬだろう」という名言を吐いた。
この三國演ずるガンで余命幾ばくの映画監督兼俳優と刃を向けられた伊丹も同じ思いだったに違いない。だからこそ あの伊丹の「死」には疑問が残るわけだが…。


★★★☆☆

お葬式

処女作にしてこの完成度の高さ(厳密に言うと2作目なのだが)。和田誠の『麻雀放浪記』と並ぶ傑作。
作中で16ミリフィルムを回し モノクロパートで見せているが(このパートの撮影は浅井慎平によるもの)、これはお葬式(という儀礼)のメイキングであり『お葬式』という映画のメイキングにもなっている。
そしてこの話自体が伊丹の実体験であり、自宅(湯河原の別荘)や実際の妻(宮本信子)を使って撮影された「ミルフィーユ・メタ構造」になっているのもミソだ(ところで愛人の話も実話なのだろうか?w)。

伊丹十三は当時 蓮實重彦に傾倒しており、『お葬式』の試写に蓮實を呼び、満を持して観せたら 一言「ダメですね」と言われたらしい(苦笑)。そして それ以降作風をエンタメに寄せていく。
で、余談なのだが それによく似たエピソードがある。
押井守監督の『うる星やつら オンリー・ユー』を「甘い甘いお菓子のような映画」と評したのが 伊丹十三だった。で、伊丹は当時併映されていた相米慎二監督の『ションベン・ライダー』の方を絶賛しており、それを聞いて落ち込んだ押井は劇場で『ションベン・ライダー』を観て「もっと(相米のように映画は)自由に作っていいんだ」と思い立ち、開き直って次に作ったのが あの名作『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』だったというわけだ。
そして意識してかしないでか、押井守の作風は伊丹十三のそれに寄せられていく。
『機動警察パトレイバー2 the movie』の柘植と南雲しのぶの関係性やピカレスク感は、そのまま『マルサの女』の権藤と板倉亮子に置き換える事は容易だ。

で、最後に言っておきたいのは この『お葬式』、処女作で取り扱っているのが いきなり「死」なのである(それと紙一重な存在として「生(性)」が描かれているのも非常に興味深い)。
まさか葬式の話が映画になって、しかもたくさんの客が呼べるとは当時は誰も思わなかったと思うが、これが日本の映画界に一石を投じ、道を切り開いた。つまり何が言いたいのかというと『お葬式』がなければ、オスカーを獲った『おくりびと』もなかったかもしれないのである。

★★★★☆

スーパーの女

ハウトゥ物もここに極まれりか。
話としては業界裏話・実録物風で面白いのだが、映画としてのカタルシスは弱め。
ほとんどのカットが俯瞰気味で引きの長回し。
ちょっと脚本とセットと役者の演技に頼りすぎている感があり。
そのため映画としての質感を犠牲にしている感じは否めなかった。
ただし社会性とエンタメの融合という難しい課題に毎回取り組んでいた事は貴重であり、後期伊丹作品を語る上ではキーワードとなる。


★★☆☆☆

マルサの女2

人気シリーズ第2弾。

エンタメ性と社会派度がグッと向上。言うなれば『エイリアン』と『エイリアン2』みたいな関係かw

三國連太郎やバイプレイヤー陣の演技がキラリと光る逸品。丹波哲郎や小林桂樹の起用などベタなキャスティングも見受けられるが、伊丹監督はあえてしっかりとした演技のできる存在感のある役者を配置する事で、映画の質感を一段も二段も上げる事を優先しているものと思われる。前田米造の撮影も素晴らしい。

この後、伊丹十三監督は自ら『~の女』シリーズを撮り続け、作風はハウトゥ感と社会性をより増し、伊丹の映像作品の原点ともいえるドキュメンタリー的要素も抱えていくようになる。ある意味、転換期となった作品とも言えよう。


★★★★☆
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