もうちょっと『TAR/ター』の話をさせてほしい。お次はラストシーンの考察。なので思いっきりネタバレである。でも初見ではおそらくわけわからんちんだと思うので、むしろこのネタバラシを読んでから観てほしいw
初めて観た時にはまったく訳がわからないラストだった。なんで観客がみんなコスプレしてんのと。
で、見終えた後に調べてみたら、どうやらコレはビデオゲーム『モンスターハンター』のフルオケコンサートだったのね。
最高峰のベルリンフィルで指揮をしていたのに対して、アジアの地で小さなオーケストラを率いてゲームミュージックを演奏するというのを都落ちと見るか、新たなジャンルへの挑戦と見るかで ハッピーエンドにもバッドエンドにも取れる、観客に委ねたラストが非常に興味深かった。
これは受け取る世代にもよるかと思うんだよね。ゲームミュージックをベルリンフィルより上に見るか下に見るかっていう。
それとこれは映画批評家たちに対しての挑戦状だとも思えた。映画ばっか真面目に見続けている人はあまりゲームはやらない。だからこのラストが理解できない(まさしく僕がそうだった)。そんなところは宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』にも似ている。一見難解な映画だが、吉野源三郎の同名小説を読んでいればスルリと理解できる内容になっており、これは「あなた、吉野源三郎をご存知ですよね?」という事を前提に作っている ちょっと意地悪な映画でもあるのだw なのでトッド・フィールド監督に「あなた、モンハンをご存知でない?」と言われたような気がしたのだw
ちなみに本作の女性指揮者 リディア・ターは エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞の4冠を制覇した十数名の「EGOT」(←各賞の頭文字を取った名称)のひとりという設定になっている。
テレビ(エミー)、音楽(グラミー)、映画(アカデミー)、演劇(トニー)…この中で抜けているのが「ゲーム」なのだ。
そう思うと、かつてバーンスタインのテレビ番組を見て音楽の道を志したリディア・ターのリスタートで幕を閉じた『TAR/ター』は ある意味ハッピーエンドだったのではなかろうかと。

